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2009年6月

六月の雨

六月の初めに金沢で女性ばかりの集まりがあり、訪問着仕立の焦げ茶の小千谷紬を着た。単衣は軽くて着やすいが、長襦袢の襟をすっかり忘れていて、前夜遅く、ホテルで絽にかえた。おしゃれは辛いことでもある。帯は白地の名古屋、御所解風の優しい模様がPhotoお太鼓の下のタレにも展開しているが、これは、杜若(カキツバタ)の帯とは比べ物にならないくらい締めやすい。この集りをお世話していただいた金沢のスタッフたちに京名物聖護院八橋を差し入れしたら、中の1人が「ところでこれは、なんで八橋っていうのですか?」と由来を尋ねてきた。うーん、諸説あるけれど有名なのは八橋検校サンがこぼれた洗い米を大切に思って堅焼きの菓子を考案したというのと、在五中将在原業平の「伊勢物語第九段」説がある。私としては、業平さんが好き、なんてったてハンサムだしね。と簡単に説明して逃げた。Photo_3 Photo_4 京都に戻って、ある日の話題に「八橋と業平」が出た時、若い母親の1人が私の名前のタカコは、六段と九段に登場する二条の后藤原高子から取ったと鼻高々に話す。「それって何のこと?」「業平さんが東宮(皇太子)のもとに上がることに内定している藤原高子さんと身分違いの恋におち、さらって逃げ出します。スリリングな恋の道行は歩けない彼女を背におぶったりして、業平さんも頑張ったけれど、芥川というところで、追手に捕まってしまう。結局高子さんは連れ戻されるが、伊勢物語六段では彼女は鬼に食われたことになっている。恋人と引き裂かれた業平は白玉の歌を残す。深窓の姫君高子さんが、初めて夜露を見て、あの草の上に光るのはなーに?白玉なのと問う。いえ、儚いものの代表露ですと答えて死んでしまいたかったと。「白玉か 何ぞと人の問ひし時 露と答えて消なましものを」。業平さんは失意の旅に出て愛知県の八橋にたどり着き、今を盛りと咲く池のカキツバタを悄然と眺める。その彼に土地の有力者かな、カキツバタの五文字を句の上に置いて即興で和歌を詠めと求めます。ら衣 つつなれにし ましあれば るばるぬる びをしぞ思ふ  無理難題さんも皆泣いたとか…はァ さすが京のヤングママたち、かなり格調高いのです。こじつけのようなお菓子と業平ですが、現在の粒あん入りや生ではなくて、原点は反り返った橋状の焼き菓子で甘いニッキの香りが漂っていましたね。極めつけはおじいちゃんが名づけたトウヤちゃん(春矢)の命名由来。東宮(春宮とも書き、とうぐうと読む)さんから来ているとか。ところで蒸し蒸しする梅雨の季節、6月30日は夏越の祓(なごしのはらえ)、1年の折り返し点です。京では無病息災を祈願して水無月をいただきますね。貴重な氷室の氷を模したウイロウ生地に、庶民は上に甘いあづき乗せて三角に仕立、水無月祓 いとおかしとやります。おいしおすえ。

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